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宇宙システム開発株式会社

“日本で有人ロケットを打ち上げたい・・・”宇宙業界を志す皆さんの中にも そういったことを考える人は少なくないのではないだろうか?

今回取材させていただいた宇宙システム技術開発(以下SSD)の広崎社長は前職の宇宙系メーカーを飛び出し、こうした夢を追いかける一人だ。事実、広崎社長は有人ロケット研究会(以下MRP)といったNPO法人の代表も兼任している。
宇宙システム開発株式会社

このNPO法人では日本での有人宇宙開発を夢見る人たちが集まり、日夜検討を進めている。会員の中からはPDエアロスペース緒川さんのように実際にロケットを作り始める人もいる。
とはいっても話はそう簡単ではない。実際に作るとなれば、技術的、法律的、予算的な障壁が大きく立ちはだかる。何よりビジネスとしてということであれば、米国のものと伍して戦い、勝利しなくてはならない。
今回単に企業説明にとどまらずそれでもなぜ、広崎社長はチャレンジされるのか?を取材させて頂きました。
 

インタビュアー(以後イ)  
  設立の経緯について教えてください。

広崎朋史様(以後広)
もともと僕は宇宙系のメーカーで衛星地上システムのプログラミングをやっていました。それもすごく面白かったんだけど、どうもそれをやり続けても、将来僕がわくわくする未来が来るとは思えなかった。ちょうどそのころ民間の宇宙開発の流れが高まっていたので僕も何かできないかと思って起業しました。
 

    SSDってどんな会社ですか?

現在の業務内容について教えてください。
 
現在の業務は大きく分けて4つあります。

◆第一がソフトウエア開発
基本的には衛星の運用計画を立案するプログラムを開発しています。たとえば地球観測衛星か何かだと、研究者のほうからは、ここのデータを取りたい!!っていう要望がたくさん来る。でも衛星はいつどこを通るかも決まっているし、様々な衛星制約があっていつでも観測ができる訳ではないし、観測したデータを地上にダウンロードするタイミングも限られている。
だとしたら、「様々な制約条件を満たした上で、どういった順番で画像を撮影していったらもっとも効率がいいか?!ってのを考えなくちゃいけない」。これを単純に人の手でやると一週間寝ないでやっても終わらない。しかも、地震とかがあって急にここの画像が撮りたい!!ってなるとまた大変。というわけでこういった計画立案専用のプログラムがあります。もともと僕が前職でそれを専門にしていたのもあり、現在でも主要な製品ですね。
このプログラムを各種メーカーに納入しています。衛星打ち上げ後は、うちの製品を使って、JAXAさんが観測計画を作成するって感じですね。主に地球観測衛星に採用されています。

◆第二が研究開発事業
我々は現在自社の工場は持っていないんだけど、某大手衛星開発メーカーの工場に入り込んで、衛星の各種装置の動作手順を作成したり、実際に装置の振動試験や熱真空試験をしたりしています。

◆第三がクリエイティブデザイン
各種印刷物の制作、WEBの構築支援、FLASHの製作を行っています。

◆第四が企画・販売事業
当社は宇宙業界を盛りたてていくことも役割の一つなので、イベントの支援やグッズ販売などを行っています。更にどんどん新規事業を開拓していくことにもチャレンジしています。最近ではこの九月に“宇宙業界向け人材紹介業務”かけはし“をスタートしました。

 
“かけはし”は何が、どう新しいんですか?同種のビジネスとしてスペースサービスが存在しますがそれらとの差別化のポイントは?
 
従来のサービスだと大手メーカー中心でしたが、うちは主に中小・ベンチャーをターゲットにしてやっていく予定です。宇宙就活もそうかもしれませんが、実は知られていない宇宙系企業ってたくさんあるんです。またこれからやっていこう!!という会社もある。こういった所も含めて宇宙系の業務をやりたいって人とマッチングしていきます。宇宙工学と言っても総合工学なので、宇宙工学を学んでいなくても機械・電気等の技術ノウハウを持った人であれば対応可能な分野はたくさんある筈だし、文系の方のノウハウだって役に立つ分野はあると思うんです。全ての他の業界で働いていいる人が対象にな得ると思っています。それに宇宙業界をやっていたけど飛ばされちゃった人とかも救いたいですね。
※今はまだ新卒向けでは行っていないそうです。
 
今後5年の展望を聞かせてください。
 
基本的には今やっている“かけはし”を第二の柱にしたいですね。そこから得たネットワークや知見を本業にどんどんフィードバックしていきたいですね。その上で宇宙業界の活性化に貢献できれば文句なしです。
 

    有人宇宙開発という夢

“深宇宙に行きたい”SSDは広崎様ご自身の夢をかなえるための場でもあり、この夢に共感する人々が集まっている。広崎様から今度は日本初の有人宇宙開発に至るまでの展望を伺った。
 
日本から"民間ベースで有人宇宙開発"を行うにあたってどういった展望を抱いていますか?課題が多くあると思いますが。
 
現状だと僕自身も明確に見えているわけじゃない。その上で今の考えを言います。
日本では先駆者の米国と違う課題が大きく分けて二つあると思います。
一つは、投資家が少ないこと。日本の投資家はもともと、リスクの高い事業に投資をしてくれない状況があります。さらに過去、某IT社長が宇宙旅行と絡んだせいで世間的にはダーティーなイメージがついてしまったせいでさらに付きにくくなっています。それに今は金融不況ですからね。
第二は、まわりの理解なんじゃないでしょうか?
今は2004年のスペースシップワンの成功をピークに、日本に限らず世界的に関心が下がってきている状態です。原因は明らかで、まだ誰も成功してないからですよね。
まず、先駆者として現在頑張っているVirgin Groupなどが成功して世間的な注目を集めてくれることに期待しています。結局のところ、技術的問題、制度的問題よりも、原因はここなのかな。
その為に何ができるか?!ってことですが、今は結局一人一人が仲間を増やしていくことに尽きるでしょう。有人ロケット研究会の立ち上げや、各種シンポジウム、学会、イベントに積極的に顔を出して仲間を増やしています。こういった地道な努力が将来独自の動きを起こすためのベースになると思っていますし、そう思えないならばやるべきじゃあないですよね。

 
民間による宇宙開発、それ以前に宇宙業界で起業し、食べていくということは、他の業界以上に難しいと思います。それでもなぜ広崎様はチャレンジをされるのですか?
 
さっきも言ったけど、僕自身も明確なビジョンが見えているわけじゃない。でも何とかしたい、僕自身が将来宇宙にも行きたいし惑星間航行をやってみたいっていう夢に突き動かされて動いています。
前にいた職場は確かに楽しかったし宇宙にかかわっている実感もあった。でも今やっていることを続けても僕が生きているうちに僕が望む未来がやってくるとは思えなかった。
考えるのが先か、動くのが先かって言ったら動いたのが先でした。でも動いたことによってそれまでの職場では得られなかった情報も支援もたくさん手に入ってきました。これらをもとに今後明確なアクションにつなげていければなと思っています。
いま日本に、民間による日本製有人宇宙旅客機開発の展望について、見えている人がいるかって言ったらたぶんいないと思うでもだからって何もしなかったら未来は実現しないんです。たとえば航空業界、今ようやく国産旅客機だってまた始まったけど、20年前はもうだめだって思っていたし見えている人も少なかったはず。それでもチャレンジし続けたからこそ今があるんです。私の活動もそういう意味があると思っています。

 
最後に学生に対してメッセージをお願いいたします。
 
どの業界も辛いことあると思いますが、それでも面白いから、楽しいから、やっているんです。宇宙業界だってそうです。それを皆さんには見つけてほしいですね。
その上で自分なりの軸を見つけてください。その為にはイメージだけでなく自分の足で情報をとってみてください。それで選んでもらったのがうちであれば最高ですね。
あと、将来に対して大きなビジョンを持っている人にはあきらめるな!!と言いたい。諦めたら、それで終わりですから。


 
宇宙システム開発株式会社の職場風景
  

取材後記
  2007年米国の民間の宇宙開発の祭典であるX-PRIZE CUPに広崎さんとそしてPDエアロスペースの緒川さんとご一緒させていただいた。当時も、そして今も進路を悩んでいた自分に「動くことの大切さ」を教えていただいた。それもあり今こうしてこのプロジェクトをやっている。宇宙業界の魅力の一つに夢や情熱を持ってひたむきに頑張る方々の存在があると思う。彼らのことをこれからも僕自身応援したい(文責:能美 康彦)

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