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株式会社テクノソルバ

みなさんこんにちは宇宙就活2008プロマネの、能美@学校でこの記事を書いています、です。
2008年9月11日に湘南台のテクノソルバ様に宇宙就活2008の久保田&春木とともに企業取材に行ってきました。
 
株式会社テクノソルバ
テクノソルバ様は衛星開発で培われた構造解析技術を武器に、数年前に立ちあがったベンチャー企業です。起業されるまでの経緯や、宇宙業界の現実など多岐にわたりお話をうかがってきました。今回インタビューにご協力いただいたのは、株式会社テクノソルバ 代表取締役中村和行様、専務取締役中村信子様のお二人です!

この記事はぜひ

@宇宙業界で起業してみたい!!と思っている人
A構造解析って何だ?って思っている人
B衛星開発に携わりたい!!と思っている人


に読んで欲しいです。

    宇宙業界ってなに?

インタビュアー(以後イ)  
  本日は宜しくお願いします。

中村和行様(以後和):
宜しくお願いします。今回のイベントは宇宙業界がなんだか分からないから、このイベントを立ちあげったって話でしたが、皆さん、どんな印象を持っていますか?
 
僕の印象としては、始めはすごくロマンにあふれたフィールドだと思っていました。でも、大学に入って、いろいろとお話を聞くうちに、そんなに甘くないぞと(笑)そこで食べていくという事に関しては、なかなか厳しいという印象を持ちました。
ただそんな中でも、情熱を持って働かれている方がすごく多いなという印象も持っています。(能美)

私は、扱っているものが大きいのに対して、それに関わっているコミュニティーがすごく小さいなという印象を持っています。そういう状況のなか、今後は他の業界とも交流を持って、どんどん発展していける業界だなという印象を持っています。(春木)

私は、まだ宇宙業界のことをよく分からない立場なのですが、まだ始まったばかりで、いろいろな可能性がある業界なのかな、という印象を持っています。(久保田)
 
なるほど、分かりました。まず、言いたいのは、外から見ているのと中で働いてみるのでは、大分違った印象を持つ業界だと思います。外から見ると、夢やロマンが大きく写ってしまうようですが、中で働いてみるとやっていることは、なんら宇宙業界以外の企業と変わりないんです。
そこを理解しているかどうかは大事なポイントだと思います。やっぱり夢だけでは仕事はできませんからね。われわれ自身も、宇宙の仕事がしたくて会社を興したわけじゃないんです。今の仕事の内容に宇宙関連が多いのは、私たちの今までの仕事の流れの影響なんです。

 
そうだったんですか
 
テクノソルバは4年半前に私と妻(中村信子様)の2人で立ち上げた会社です。それまで、私はまさに宇宙開発関係の仕事、人工衛星の開発をやっていました。
 

中村信子様(以後信):
私も、人工衛星の開発をやっていました。民生品の開発に関わっていた時期もありましたが。
 
私たちは、そういうバックグラウンドを持っていて、なぜ、起業しようと思ったかというと、われわれはエンジニアで、ものを作る仕事に関わっていたいという思いがありました。でも、大企業の中では、自分のやりたい仕事をできることは少ないんですね。例えば、キャリアを積むと、システムの設計やプロジェクトマネージメントや企業自体のマネージメントなどに仕事内容がシフトしてくるんですね。
そうすると、自分たちが思い描いていた仕事と内容とはギャップが出てくるんです。
テクノソルバは、構造解析(CAE)をメインにしていますが、もともと二人ともそれをやり続けていたので、構造物の構造解析をすることで、設計をより改善することにとてもやりがいを感じるんです。
やはり宇宙関連のプロジェクトはとても規模が大きくなりますので、私も大手の企業にいた頃、プロジェクトマネージメントに仕事内容がシフトしていってしまったんです。私にとっては、そういった仕事にあまりやりがいを感じられなかったんですね。そう感じていたときに、同じ仕事をしていて、同じスキルをもった妻と一緒にいろいろと話し合って、構造解析という技術は、宇宙業界だけではなく、いろいろなところに活用できるということで、起業しようということになりました。これが設立の経緯ですね。

 
宇宙業界でお仕事をするにはJAXAの認可を受けなきゃいけないってホントですか?
 
そういうことはないですね。ただ、入ろうと思ってもなかなか入りづらい業界ではありますね。明日から突然、衛星の設計をやろう!というのは難しいですよね、宇宙って言う特殊な環境で動かすものですし、なんと言っても修理できない、っていうのが大きいですね。どうやったら壊れないかっていうノウハウなんかは宇宙業界では常識ですが、他の業界の人は知らないので入り込みにくいですね。
われわれは、その辺のノウハウですとか、コネを持っていましたので、入り込みやすかったです。仕事としては、やはり前にいた会社からの仕事が主になってるんですが、打ち合わせに行っても、社内で話をするような雰囲気で、スムーズに話が進みますね。
逆に、われわれが苦しんでいるのは、他の業界に入り込みづらいって事なんです。自動車のメーカーさんなんかでも構造解析は盛んに行われているんですが、技術力やコネクションの面で、今後の経験を積んでいかないと厳しいかなというところです。

 
やはり、自動車メーカーは毛色が違うんですよね。独自の文化を持ってるんですよね。会社のつながりや、下請けの仕組みなんかですね。
 
われわれのターゲットのひとつとして、中小企業さんを考えているんですが、いままで構造解析という技術を知らないところに、こんなことができますよと提案しても、なかなか受け入れてはもらえないですね。
 
構造解析って、宇宙以外の業界では、あまり一般的ではないんですか?
 
大手の製造メーカーさんでは一般的ですね。ただ、中小企業さんでは、コストの面やノウハウの面で、導入するのが難しい部分があるようです。
 
お仕事を取ってくるのって厳しいんだなというのが分かりました。
 
そうですね〜ただ、需要はあるので、きちんと仕事をこなしていけば、徐々に仕事は増えていくんだな、という実感はありますよ。
 
なるほど、テクノソルバさんの強みってなんなんでしょうか?
 
そうですね、技術的な強みが一番だと思います。宇宙関係の構造解析をやっているので軽量化や振動対策はもちろんですが、カーボンファイバーを使った構造物を扱えるって言う強みもありますね。宇宙での装置は軽く、丈夫に作らないといけないので、カーボンは重要なんです。ですから、カーボンの設計から解析までの技術力は強みですね。
 
そういった技術やノウハウに特許が出て、企業が守ってたりしないんですか??
 
技術的な知識は特許になりにくいんですよね。構造解析のノウハウなんかは特許で守られてるって事はほとんどないですよ。
 
大学で今、材料の勉強してるので、とても興味があります!
 
大学はどちらなんですか?
 
横浜国立大学の工学部建築学科です。
 
あっ後輩ですね(笑)

ちょっとの間大学トークで盛り上がる…  

    構造解析 構造モデル?

お仕事内容をもう少し具体的に聞かせて下さい。
 
衛星関係の構造モデルを作ったり、宇宙で展開する大型アンテナの収納時の構造解析ですとか、HTV(宇宙ステーション補給機)の搭載物の構造解析なんかをやってます。
 
ちょっと言葉の意味が分からないんですが、構造モデルってなんですか?
 
構造解析をするために、打ち込む数値データの組み合わせを構造モデルと言って、それを使って、固有振動数を求めたり、強度解析などを実際に行うのが構造解析です。
 
・・・すみません、よく分かりません・・・
 
例えば、地球上で起きるハリケーンなどのシミュレーションをするとき、それを行うためには、コンピューター上に、数学的に地球をあらわしたようなモデルが必要になります。その数値の組み合わせで表現した地球に、いろいろな条件を課して、計算するのがシュミレーションですよね。
そのときに地球を表現するために作った数値の組み合わせが、構造モデルなんです。

 
なるほど!よく分かりました、ありがとうございます!!
 

    構造解析という分野の過去現在未来

今の宇宙業界で、構造解析の実情を聞かせて下さい。
 
そうですね、構造解析っていうのは、宇宙がベースになってできた分野なんです。それが、いろんな業界に派生していって、お金のかけ方が違うので今や自動車業界のほうが進んでるんです。
実は、宇宙関係の構造解析って、あまり高度な解析を必要としないんです。

 
へえ!それは以外です。宇宙って条件の厳しさから考えて自動車なんかよりも難しいのかと思ってました。
 
そうですね、たしかに条件は厳しいんですが、使う条件が厳しいのと難しい構造解析をすることはぜんぜん違うんです。難しい構造解析って言うのは、つまり非線形の解析ですね。典型的なのは、自動車で言うとクラッシュのシミュレーションなんかですね。
それに比べて、宇宙関係は壊れちゃいけないものなので、壊れるときのシミュレーションはやりません。だから、非線形の解析は必要ないんですね。そう意味で宇宙関係の構造解析の分野は、もうある程度確立されているんです。

 
素朴な疑問なんですが、なぜ作ったメーカーが構造解析までやらないんですか?
 
そうですね、宇宙業界で大手が下請けに頼んで分業することの理由はとしては、まず人手が足りない、それとコスト面での問題ですね。
宇宙業界は狭いので、あまりニーズがない分、ソフトウェアの会社が宇宙業界向けに便利な機能をたくさん用意してくれたりはしません。
一方で、構造解析の分野はビジネスとしては、ボリュームの小さい分野です。ですから、企業側としてあまりコストや人手を避けないので、ノウハウを持っているわれわれなどに頼んだ方が効率的なんですね。

 
なるほど。
 

    起業するって??

宇宙業界においてエンジニアリング分野で将来起業するってことについてお話聞かせて下さい。
 
起業という観点ではエンジニア分野というよりは商社系などの分野のほうが望みはあると思います。エンジニア分野で起業しようというのは正直かなり厳しい!!ですね。我々もかなり偶然に引っ張られてきました。
 
なるほど、企業前にどの程度計画を立てていましたか?それとのギャップはどれぐらいありましたか?
 
単に覚悟ですね。3年やってだめならもう一度勤めようと思っていました。それまでやれるだけやろうと。見込み違いとしては宇宙の仕事が多すぎること!(笑)宇宙の仕事が多すぎてまず営業活動ができなくて宇宙以外の仕事が取れない!しかも宇宙の仕事も宇宙以外の仕事も両方増えちゃってるんです(笑)
 
宇宙系の仕事が増えている理由は何だと考えていらっしゃいますか?
 
業界としてはコストとして厳しいから人をあてきれないので外に出したいというのがあると考えています・・・宇宙業界はそもそもパイが少ないので、人をたくさん採用できるわけではないですし。
衛星関係のビジネスは見通しが全然立てられない状況です。一昔前は商用衛星も上がっていましたが今はほとんど国策衛星です、それも非常に数が少ない。企業は大変なんですね。
そうなってしまったのはいろんな過去の事情があります。ただ個人的な考えを言うならばもはや商用衛星の中心である通信衛星、放送衛星の存在意義が少なくとも日本においてはなくなってきていることがあると思います。
日本の場合、光通信などの地上インフラがありますし、地上波関係においては地上波デジタル等こちらも非常に充実している。そうすると衛星の出てくる必要は全然ないわけです。
そうすると残る分野は観測・探査です。こちらはそもそもが国策が中心ですし、国策としてもそんなに何機も上げる必要もない。

 
うーんきびしいですねぇ・・
 
夢を持っている方には厳しい話になってしまいましたね(笑)ただそういう現実があるってことです。そういうわけで採用、就職という観点からでも宇宙業界は厳しい状況になっているんです。
一時期民間で宇宙ビジネスをやろうという観点が盛り上がっていましたが、結局ネタがないんですね。それに技術的観点でいえば有人宇宙関係となったとたんアメリカにはかなわない。
昔シャトルの搭載ミッションに、企業時代にかかわったことがありました。その時に物量も底力も全然違うなぁと痛感しましたね(笑)
皆さんにはこういった現実を踏まえた上で皆さんは自分なりのかかわり方を探されるといいのかなと思います。そういったことを知らないままに入っても、こんなはずじゃあなかったとか、入ってからが大変ですしね。

 
自分自身、現状どうなっているのかを知りたくてこのプロジェクトをやっているので今回お話が聞けて本当に良かったです。
 

    テクノソルバの今後就活生へメッセージ

御社の今後の展望を聞かせて下さい。
 
宇宙からのスピンオフをキーワードに、宇宙業界以外含めて業務を拡大していきたいですね。その中でも中小企業を中心にしていきたいです。
余談ですが、宇宙を前面に押し出すとそういった所は引いてしまうので難しいんです(笑)

 
意外ですね
 
そんな大変なものはうちでは必要ない!!って感じになってしまうんです。難しいんですね。
 
これから宇宙業界の将来を担う学生へメッセージをお願いいたします。
 
大学レベルで基礎的な学力をつけておいてほしいですね(笑)
式を全部覚えている必要はないですが問題にぶち当たった時にどこを探せばいいかわかるぐらいのレベルでいいんです。やっぱり大学時代にきちんとこういう力をつけておくことは本当に大切です。

 
皆さんはこれから研究室に入ると思います。たぶん入ったら研究のテーマ以外にたくさん雑用があると思うんですが、そういったものはすごーく大切なんです。それから他の人がやっていることをしっかり見て、覚えておいてほしいですね。
 
それもこれも全部、“自分で考える力をつける”っていうことにつながってくるんです。企業によって使う知識は違うかもしれないですが、それらを広く、体系的に学べる場所が大学なんです。それがベースになって、その上に自分なりの考え方を構築していくことが今後の自分自身を作っていくんです。
 
うう・・耳が痛いです(笑)しっかり勉強し直しておきます。今回は本当にどうもありがとうございました!!
 


 
【締め】

 “宇宙業界での起業”ということを切り口に今回は取材を伺ってきました。結構ダーク?な話題もあったかもしれませんが、中村さんがおっしゃっていた通り、このことを踏まえて自分自身はどうかかわっていきたいのかを考えることが我々に必要なのだと考えています。

僕自身、大学入学後 3 年間いろんな話をうかがってきましたが宇宙業界はどうも夢とロマンだけでできているわけではないということがわかってきました。

今改めて、宇宙業界は今どうなっているのか、これからどうなっていこうとしているのかその中で自分に何ができるのか、を考えています。

この記事が、そして宇宙就活 2008 が皆さんなりの宇宙業界に対するスタンスを確立するお手伝いをできることを願って今回は筆をおきたいと思います。

 
 
"文責 宇宙就活 2008 PM :能美 康彦
取材担当:久保田 明夏
 
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