久 |
では今度はJAMSSさんがどんな会社なのかについてお伺いしてよろしいでしょうか?
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山 |
いい意味でも悪い意味でも一人一人がもつ仕事というのはかなり大きいですね。メイン事業がJEMの運用利用なので、まさに今走ってる状況です。人手は本当に足らないんですが、会社としてはバッと人をとるわけにはいかない、というわけで。それこそ即現場、ということでケネディースペースセンターに一年目から派遣したりしています。若いから下働きというよりは、やりたければ前に出ていける環境ではあると思います。まぁ今後の課題は、如何に教育体制や運用に即した体制をを整えていくのか?ということでしょうかね。
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能 |
なるほど
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山 |
うちの会社は比較的、若い会社なんですね。ほとんどの社員は中途として採用された人ですし、やっと、最初に新卒採用した人が中堅に育ってきたなという感じです。そういう意味でまだ一つのカラーに染まってはいませんが、社風についてはまさに今出来つつあるプロセスと言えると思います。
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能 |
ちなみにやまのはさんは?中途で就職されたんですか?
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山 |
実は証券会社にいたんです。この会社ができて一年目のときに就職しました。
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能久 |
えぇ!すごく意外です!!
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山 |
「当時はバブルだったので(笑)就職活動=小遣い稼ぎという、ずいぶんとまぁあり得ない考えを持っていまして(笑)。
法学部を卒業して当時花形だった証券会社に就職して、日本の経済を引っ張っていくか、とは思っていたのですが・・・まぁなかなか合わないなぁと感じまして、他の場所を探していたところこの会社を見つけました。
実はその時技術職しかとっていなかったんですが、それでもアクセスしてみたら、その時の担当者が面白いということで採用していただきました。」
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能 |
やっぱり宇宙系を目指されていたんですか?
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山 |
まぁ男の子は誰でも一度は思いますよね。パイロットにも興味もあったんですが、目が悪いということで法学部に行ったんですよ。転職のときに昔あこがれの世界になんとか関わっていければ良いなと思っていたら、なんとか入れたという感じです。
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能 |
証券会社との違いとはどの辺にあると思いますか?
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山 |
私は事務屋ですからやってること、営業、人事等、は他の会社と同じといっては同じですが、扱っている商品が宇宙ですからそこがまず違います。あとは、会社にいても宇宙マニアでいい!! ということでしょうか。会社にも多いですしね、というかまぁそうでないと仕事がやっていけないですしね。
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能 |
中途採用の割合というのはどれぐらいなんでしょうか?
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山 |
全体の3分の2は中途ですかね。最初は出向者という形でこられた人がほとんどでした。内部の人間が育っていくにつれて、中途で採用を初めて行きました。現状では総勢198人、9名が出向、ほかは全部うちの社員ですね。とはいっても30人ぐらいは今度はJAXAに派遣しています。
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能 |
30人もですか?
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山 |
JAXAから請け負って行う業務がやはり多いですからね。3年ほど私自身も派遣されていました。JAXA側の職員として、予算の折衝や安全管理をやっています。面白い話なんですが、我々がJAXAと仕事をやっているときに、JAXA側の担当者が我々の会社の社員だったということもあります(笑)。
JAXAの中の有人宇宙にはかなりかかわっていますね。
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能 |
設立経緯をうかがってよろしいでしょうか?そもそも、JAXAにも有人宇宙部門があるのに、なぜJAMSSが立ち上げられたのでしょうか?
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山 |
レーガン大統領がISSを作ろうと号令をとったときに、日本側では当時のNASDAがその仕事を請け負いました。当時NASDAはなんとか国産ロケットを開発しようという雰囲気でした。つまり無人でしか業務を行っていなかったんです。有人になると無人に比べて安全性の要求度合いなど、考慮に入れなければならないことが一気に増えるわけで、組織として新しいものを急に立ち上げなければならなかった。
しかし、当時のNASDAは特殊法人なので人事勧告というものがあり、急に人は雇えない。仕事はある、人はないし、増やせない、というわけで、じゃあ会社を作ってしまおう!! ということでできたのがわが社です。当時宇宙開発に同調してくださった会社群がほぼ均等に出資して出来ました。政策的に作られた会社なので、民という形をとってはいますが90パーセントぐらいの仕事は官、ですね。
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能 |
民間に対する仕事としては先に伺った業務以外にはどういったものがあるんですか?
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山 |
有人宇宙関係以外でしたら、我々は安全審査業務も行っているので、第三者機関として、企業の製品の安全性を審査したりする業務がありますね。
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能 |
宇宙開発=ものづくりというイメージがあったので、そういう仕事があること事態が驚きです。
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山 |
そうですね、我々は “ものづくりをしたい方”にはうちは向かないとよく言います。我々は幅広い、知識を元に、ありとあらゆる要求をまとめ上げていく業務が主です。どちらかというとペーパーワークが主なので、それでもいい、という方には来てもらいたいと思います。
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能 |
まさにインテグレーターですね。
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山 |
そうですね。そのかわりといってはあれですが、宇宙飛行士の選抜業務の一部も我々がやってるんですね。
我々が選考基準、テストを作り、JAXAが認証して、JAXA公認としてやっているんです。我々が最初に採用のお手伝いをしたのは若田さんからです。それ以降は全部我々ですね。そして、彼らを選抜するだけではなく、日本人以外も含めたJEMを利用する宇宙飛行士を教育する仕事も我々の仕事なんです。
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能 |
彼ら以外も?外国の方もということですか?
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山 |
国際的な取り決めがありまして、ISSはその装置を作った国で教育しなければならないんです。
外国の方もJEMの中に入って作業をされるので、世界中の方に対してJEMのインストラクターになっているのが、われわれです。
そういう意味でハードは触りませんが、ハードの知識は持っていないといけない。どうできているか、はともかく、使い方は知っていなければならない。そして事故があったらどこがおかしくなるかは知っていなければならない。
そしてそれを教えられるようでなければいけないわけです。単なる技術好きではいられないわけです。
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能 |
本当にいろんな能力が要求されるんですね。
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山 |
もちろん、そういう人にはそういう人向けの仕事もありますがね(笑)
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